開店祝いの花の相場は、取引先なら1万〜3万円、友人や知人なら5,000〜1万円が基準です。ただし金額より先に決めるのはいつ届けるかです。届く日を1日間違えると、金額をいくら積んでも意味がなくなります。
開店祝いの花は、なぜ相場が分かりにくいのか?
これまで100軒以上の花屋を回り、100回以上花を買ってきました。開店祝いも贈っています。それでも、開店祝いだけは最後まで金額の見当がつきませんでした。
理由は「個人として贈る」と「会社として贈る」が同じ検索結果に混ざるからです。友人のカフェへの5,000円と、取引先の新店舗へ社名で出す5万円が同じページに並ぶ。桁が10倍違うものを一つの相場として読もうとするから着地しません。
もう一つ、開店祝いには贈り先が「店」であるという条件があります。営業時間があり、広さの限界があり、開店直前は搬入で足の踏み場もない。受け取れる状態かどうかが、金額と同じくらい重要になります。
関係性別に、相場はいくらか?
相場を一つの数字で言おうとするから迷います。「誰として贈るか」で分ければ絞れます。
| 贈る相手・立場 | 金額の目安 | 形の目安 |
|---|---|---|
| 友人・知人の個人店 | 5,000〜10,000円 | アレンジメント、小さめの鉢 |
| 親族・身内の開業 | 10,000〜30,000円 | 胡蝶蘭3本立ち、スタンド花 |
| 取引先・法人として | 15,000〜50,000円 | 胡蝶蘭3〜5本立ち |
| 社内の有志・連名 | 10,000〜20,000円 | 胡蝶蘭3本立ち、アレンジメント |
一番選ばれているのは3万円前後です。日比谷花壇も、開店祝いで人気の価格帯は3万円台だと書いています。大輪の胡蝶蘭3本立ちがちょうど収まる金額で、「法人として恥ずかしくない最低ライン」がここにあると考えると分かりやすくなります。
逆に言えば、個人で贈るなら3万円に合わせる必要はありません。友人の店に3万円の胡蝶蘭が届くと、相手はお返しを考え始めます。金額は評価ではなく、立場の表明です。
胡蝶蘭・スタンド花・アレンジは、金額と向き不向きがどう違うのか?
| 形 | 金額の目安 | もつ期間 | 向いている店 |
|---|---|---|---|
| 胡蝶蘭 3本立ち | 20,000〜35,000円 | 1〜2ヶ月 | オフィス、クリニック、広さのある店 |
| 胡蝶蘭 5本立ち | 40,000〜60,000円 | 1〜2ヶ月 | 取引先・大型店舗 |
| スタンド花(1段) | 10,000〜20,000円 | 5日〜1週間 | 路面店。外から見える店先 |
| アレンジメント | 5,000〜15,000円 | 1〜2週間 | カウンター、狭い個人店 |
| 観葉植物 | 8,000〜20,000円 | 年単位 | 長く置いてほしい店 |
一番見落とされるのが「もつ期間」の差です。スタンド花は生花なので5日ほどで見た目が崩れます。開店の日が一番華やかで、1週間後には店先で萎れている。これが最も起きているすれ違いです。花の種類ごとに日数がどれくらい違うかは花束は何日持つ?にまとめました。
知人のカフェの開店には、胡蝶蘭の3本立ちを22,000円(税込・立て札と配送料込み)で贈りました。理由は見栄えではなく、2ヶ月近く手をかけずに置けるからです。何にお金が乗っているかは花束の原価を調べた記事にまとめました。
いつ贈るのが正解か?
開店の前日に届くよう手配する。これが基本です。早くても1週間前、遅くとも当日の午前中には届いている状態にします。
| タイミング | 評価 | 理由 |
|---|---|---|
| 1週間以上前 | △ | 内装工事中で受け取れない。花も開店日に疲れている |
| 3日前〜前日 | ◎ | 最も確実。店主が置き場所を決められる |
| 当日の午前 | ○ | 間に合うが、搬入と重なると受け取りが雑になる |
| 当日の営業中 | × | 客が入っている時間に大きな荷物が届く |
| 開店後 | × | 祝いではなく「遅れた挨拶」になる |
花屋をやっている友人に聞いても答えは同じでした。「当日着より前日着のほうが事故が少ない」。開店当日は什器や食材の搬入で入口が埋まります。そこに1メートル超の胡蝶蘭が届いても置く場所がありません。
開店日を1週間以上過ぎたら、無理に「開店祝い」にしないこと。立て札を「祝 御開店」から外し、普通の贈り物として渡すほうが自然です。遅れた祝いは、遅れたことのほうが記憶に残ります。
なぜ開店祝いは胡蝶蘭ばかりなのか?
格式の問題だと思っていました。違いました。胡蝶蘭が選ばれるのは、店にとって手間が最も少ない花だからです。
- 香りがほとんどない。飲食店やクリニックでも料理や薬の匂いと干渉しない
- 花粉が落ちない。ユリのように床やテーブルを汚さない
- 1〜2ヶ月もつ。開店から軌道に乗るまでの期間をそのままカバーする
- 水やりが週1回程度で済む。忙しい開店直後でも枯らさない
- 鉢が自立する。スタンド花のように、あとで金具やかごの処分が発生しない
つまり胡蝶蘭は、贈る側の見栄えではなく受け取る側の負担を最小にするための花です。予算が届かないときも、香りが弱く、花粉が落ちず、水やりが少ない——この3つを満たすものを選べば十分です。観葉植物が強いのも同じ理由です。
立て札には何を書けばいいか?
開店祝いの花には立て札(木札)を必ず付けます。メッセージカードは店内に置かれて誰からか分からなくなりますが、立て札は花に挿さったまま外から見えます。
| 要素 | 書く内容 |
|---|---|
| 表書き(上段) | 祝 御開店/祝 御開業/祝 御開院 |
| 贈り主(下段) | 会社名+役職+氏名、または個人名 |
| 贈り先(任意) | 「◯◯様へ」を右側に。店名を入れると通行人にも伝わる |
連名は役職が上の人を右から順に書きます。読めるのは3名までで、それを超えるなら「株式会社◯◯ 営業部一同」にまとめます。長い社名は自動で折り返されるので、注文時に「2行で」と書き添えると安定します。
立て札に店舗名を入れると、店の前を通る人にも開店が伝わります。開店祝いの花は、祝いであると同時に告知でもある——誕生日の花束と違う点です。
開店祝いで避けたほうがいい花はあるか?
| 避けるもの | 理由 |
|---|---|
| 赤一色の花 | 火事を連想させるとされる。飲食店では今も気にする人がいる |
| 香りの強い花(ユリ、フリージアなど) | 飲食店で料理の香りと干渉する |
| 花粉の多い花 | 床やカウンターを汚す。ユリは特に落ちる |
| 鉢植えを病院・クリニックへ | 「根付く=寝付く」を嫌う人がいる |
| 大きすぎるスタンド花 | 店の間口を塞ぐ。消防や通路の都合で置けないことがある |
ただし赤い花のタブーは業種で扱いが変わります。飲食店では避けられますが、アパレルや美容室では好まれることもあります。迷ったら赤を差し色に留め、白かグリーンでまとめれば成立します。
マナーの考え方は結婚祝いに花を贈るときのマナーがそのまま使えます。タブーの多くは花ではなく、渡す場面の条件から来ています。
店が狭いとき、花はどうすればいいのか?
10坪前後の個人店に胡蝶蘭が5鉢届くと、店の面積の1割が花で埋まります。開店祝いが迷惑になるのは、金額でも花の種類でもなく、ほぼこの一点です。
対処は3つ。①事前に一言聞く。「花を贈りたいのですが、置く場所はありますか」は失礼になりません。②小さくする。胡蝶蘭のミディ(中輪)3本立ちなら10,000〜15,000円で、高さが半分以下に収まります。③花以外に振り分ける。スタンド花1万円を、アレンジ5,000円+商品券に分けるほうが実用的な場面もあります。
負担になるかどうかの判断基準は花を贈るのは迷惑じゃない?に整理しました。迷惑になるのは「置き場所」と「手入れ」を相手に丸投げしたときです。
花屋にはどう伝えればいいか?
開店祝いの注文で伝えるのは、次の5つだけです。
- 用途「開店祝いです」
- 届け先の業種「飲食店です」「クリニックです」(香りと色の判断に直結する)
- お届け日「開店が◯月◯日なので、前日の午前着で」
- 予算「2万円前後で」
- 立て札の文言「祝 御開店/株式会社◯◯ 山田太郎」
このうち②の業種が最も効きます。「飲食店です」と言えば、香りの強い花と花粉の落ちる花は花屋の側で外れます。タブーを暗記する必要はありません。伝え方そのものは花屋で何を言えばいいか分からない人へにまとめています。
もう一つ、注文時に回収の可否を聞いておきます。スタンド花は1週間ほどで撤去が必要で、金具やかごが店側の粗大ごみになることもあります。発注時に「1週間後の回収」を頼んでおくだけで、相手の後始末が消えます。
よくある質問
開店祝いの花は、開店当日に贈っても大丈夫ですか?
当日でも大丈夫ですが、午前中の到着に限ります。営業が始まってから届くと、客がいる店内に大きな荷物が入ります。最も確実なのは前日着です。店主が店にいる可能性が高く、置き場所も自分で決められます。
5,000円の予算だと、開店祝いには安すぎますか?
個人として贈るなら安すぎません。安く見えるのは金額ではなく、形が場に合っていないときです。5,000円で小さいスタンド花を頼むと貧相に見えますが、同じ5,000円のアレンジメントをカウンターに置けば見劣りしません。取引先へ法人名で贈る場合のみ、1万5,000円以上が目安です。
贈った花は、こちらで回収を手配したほうがいいですか?
スタンド花なら手配したほうが親切です。生花のスタンドは5日ほどで見た目が崩れ、金具やかごの処分費が店側の負担になることもあります。注文時に「1週間後の回収」まで頼んでおくのが最も手間がかかりません。胡蝶蘭やアレンジメントは回収不要です。
この記事は、100軒以上の花屋を回り、100回以上花を買ってきた買い手の立場から書いています。僕は花屋でもフローリストでもありません。売る側ではなく、買う側として詰まってきた経験がもとになっています。
