彼女に花を贈るのが恥ずかしい人へ|小さくすれば9割解決します

窓辺の木の椅子に置かれた、紙に包まれたままの小さな白い花束

花を渡すのが恥ずかしいのは、多くの場合花束が大きすぎるからです。サイズを片手で持てるくらいまで下げると、渡す側のハードルはほとんど消えます。金額でいうと3,000円前後、花7本くらい。

「気持ちの問題」ではありません。物理的な問題です。

何が恥ずかしいのか?

「花を渡すのが恥ずかしい」は、ひとつの感情に見えて、実際は4つの別々の場面に分かれます。どこで止まっているかで、対処法がまったく違います。

① 花屋に入る瞬間が気まずい

買う前に止まっているパターンです。店の前まで行って、入らずに通り過ぎたことがある人はここ。渡す勇気ではなく、レジまでの数十秒の問題なので、対策は一番簡単です。

② 持ち歩いている時間が長い

これが最大の要因です。渡す一瞬ではなく、買ってから渡すまでの移動が恥ずかしい。

大きな花束を抱えて電車に乗ると、確実に視線が集まります。しかも両手が塞がるので、スマホも見られない。この状態が30分続くと、渡す前に消耗します。

③ 渡す瞬間が「イベント」になる

大きい花束は、渡すときに間が生まれます。相手が受け取って、驚いて、リアクションする。この数秒の空白が気まずい。

小さい花束だと、この間が生まれません。「はい、これ」で終わります。

④ 相手の反応が読めない

喜ばれなかったらどうしよう、という不安。これは実は相手のことを考えている証拠なので、悪いことではありません。ただし後述しますが、「いらない」と言われる理由はたいてい花そのものではありません。

①〜③は段取りで消せます。④だけが相手の話ですが、これも条件を整えれば9割は事前につぶせます。以下、順番に潰していきます。

花屋に入るのが怖いときはどうする?

入りにくさの正体は「何と言えばいいか分からない」です。逆に言えば、言う文を1つ決めておけば入れます。

実際、僕がいつも使っているのはこの一文だけです。

「3,000円くらいで、小さめの花束をお願いします。電車で持ち帰ります」

予算・サイズ・持ち帰り方。この3つさえ言えば、あとは全部向こうが決めてくれます。花の名前を1つも知らなくても成立します。花屋での伝え方はこちらにまとめました

それでも店構えが重いと感じるなら、駅ビルや駅ナカの花屋から始めるのがおすすめです。人の出入りが多く、レジが流れ作業なので、じっくり相談する空気になりません。個人店の落ち着いた店内は、慣れてからで十分です。

どうしても店に入れない日は、ネット注文という逃げ道もあります。受け取り時間を指定して店頭でピックアップすれば、店内にいるのは30秒です。ただし「センスがないから選べない」が理由なら、ネットに逃げても解決しません。選ぶ苦手さについてはプレゼントのセンスがない人向けの記事のほうが近いです。

対策①:小さくする

3,000円前後、花7本程度、片手で持てるサイズ。これが一番実用的です。

もっと下げてもいい。1,000〜2,000円なら花3〜5本の小さな束になります。丈は30cm前後、片手で持って腕を下ろしても地面につかない長さです。この大きさなら、コートの内側に寄せて持てば花束に見えません。

店頭では大きい花束のほうが見栄えがします。だから予算を上げたくなる。でも店頭での見栄えと、持ち帰りやすさは逆相関です。渡す前に潰れたり、しおれたりしたら意味がありません。

注文するときに「電車で持ち帰るので小さめに」と伝えれば、丈を短くして持ちやすく作ってくれます。5,000円を1回渡すより、2,000円を3回渡すほうが、渡す側も受け取る側も慣れます。

対策②:持ち歩く時間を短くする

恥ずかしさの正体が移動時間なら、移動を減らせば解決します。

  • 会う場所の近くで買う
  • 渡す直前に受け取る(取り置きを頼んでおく)
  • 紙袋に入れてもらう(見た目が花束でなくなる)

紙袋は特に効きます。花屋によっては言えば入れてくれます。持ち歩きの視線がゼロになります。

取り置きも同じくらい効きます。昼のうちに電話か店頭で頼んでおき、待ち合わせの直前に受け取る。これだけで持ち歩き時間は5分になります。恥ずかしい時間そのものを、段取りで削るという考え方です。

対策③:渡し方を先に決めておく

渡す瞬間が気まずいのは、その場でどう渡すか考えているからです。手順を先に決めておけば、当日は実行するだけになります。

  • タイミングは「会った瞬間」より「別れ際」か「家に着いてから」。会った直後に渡すと、そのあとずっと相手が花を持つことになります
  • 紙袋のまま渡す。「これ、あとで開けて」で済み、リアクションを待つ数秒が消えます
  • 言葉は一文だけ用意する。「これ好きそうだと思って」で十分。長い説明はいりません
  • テーブルに置く渡し方もある。手渡しが照れくさいなら、座ってから横に置くだけでも成立します

相手の好みが分からないから渡し方に迷う、という場合もあります。そこは相手の好みが分からないときの考え方のほうが本題に近いです。結論だけ言うと、好みを当てにいかなくていい。白と緑を中心にした束は、ほぼ外しません。

対策④:記念日を外す

誕生日や記念日に渡そうとすると、どうしても構えます。「ちゃんとしたものを渡さないと」という圧がかかるからです。

なんでもない平日に、小さい花を渡すほうが圧倒的にハードルが低い。そして、記憶に残るのはむしろこちらです。理由がない贈り物のほうが、理由を考えた形跡が伝わります。

記念日は金額の勝負になりやすく、去年より小さいと減点に見えます。平日の1,000円の花には、比較対象がありません。最初の1回は、比べられない日に渡すのが一番ラクです。

「いらない」と言われたら?

「花はすぐ枯れるからもったいない」と言われることがあります。でもこの言葉の中身は、たいてい別のところにあります。

  • 花瓶がない(一番多い)
  • 置き場所がない
  • 世話が面倒に感じる
  • 枯れたときに捨てるのが忍びない

つまり「花が嫌い」ではなく「扱いに困る」ということです。だとすれば、小さい花束にして「コップで大丈夫だよ」と一言添えるだけで、その障害はなくなります。

そもそも花が迷惑になるのは、大きさとタイミングを外したときだけです。条件を整理した記事は花を贈るのは迷惑じゃない?にまとめました。

付け加えると、花瓶がない家は珍しくありません。事前に「花瓶ある?」と聞くのは無粋に思えますが、聞かれた側は困りません。むしろコップでも成立すると先に伝えたほうが、受け取る側の心理的な負担は下がります。

枯れることについては、こう考えています。残るものはいつか日常になる。残らないものは記憶になる。花が枯れるまでの数日間、相手は毎日それを見ます。それは、ずっと棚に置かれるものとは別の残り方をします。

100回渡してきて分かったこと

これまで100軒以上の花屋で、100回以上花を買ってきました。いろんな相手に渡してきて、はっきりしたことが2つあります。

1つ目。恥ずかしさは、回数で減ります。1回目が一番きつい。3回目にはもう何も感じません。これは慣れの問題なので、最初の1回を小さく始めるほど早く抜けられます。

2つ目。相手が覚えているのは、花の種類ではありません。「なんでこれを選んだのか」です。高い花束より、「これ好きそうだと思って」の一言のほうが残ります。

だから最初の1本は、安くていいし、小さくていい。値段の中身については別記事にまとめましたが、結論としては金額より伝え方のほうが効きます。

そして、これだけ外し続けてきた僕がまだ花を選ぶのは、花が「うまくやらなくても成立する数少ない贈り物」だからです。センスも予算も要らない。小さい束を、なんでもない日に、紙袋で渡す。恥ずかしさを消す方法を探しているなら、それが答えです。

よくある質問

男が花屋に一人で入るのは浮きませんか?

浮きません。むしろ花屋側は慣れています。100軒以上回りましたが、変な顔をされたことは一度もありませんでした。気にしているのは自分だけ、というのが実感です。予算とサイズだけ言えば会話は30秒で終わります。

花瓶を持っていない相手には何を渡せばいいですか?

そのまま飾れるアレンジメント(器に活けてある形)にすると、花瓶が要りません。花束より少し高くなりますが、相手の手間はゼロになります。小さい花束+「コップでいいよ」でも成立します。3〜5本の束なら、マグカップでも十分に収まります。

サプライズと事前告知、どちらがいいですか?

持ち帰りの負担を考えるなら、事前に伝えておくほうが親切な場面もあります。相手がそのあと長時間出かける予定なら、サプライズは負担になります。小さい花束であれば負担も小さいので、サプライズにするかどうかは大きさで決めるのが実際的です。


100軒以上の花屋を回り、100回以上花を買ってきた買い手の立場で書いています。僕は花屋でもフローリストでもありません。