結論から書きます。「センスがない」のではなく、選ぶときの基準を持っていないだけです。プレゼントを100回以上贈って、そのうち少なくとも3割は明らかに外してきた実感で言うと、外れる原因の9割は「相手の状況」ではなく「自分がいいと思うもの」を基準に選んでいることでした。そしてこの基準の作り方が分かれば、センスは要らなくなります。花はその基準がもっとも作りやすい贈り物の一つです。
なぜ「センスがない」と感じてしまうのか?
プレゼント選びで落ち込む人の多くは、「センスがある人」を、生まれつき相手の好みを見抜ける人だと思っています。僕も長い間そう思っていました。花屋を100軒以上まわり、贈り物として花を100回以上買ってきましたが、最初の30回くらいは選ぶたびに不安でした。渡した瞬間の相手の反応で「外した」と分かる感覚を、何度も味わったからです。
ただ、外れた回を振り返ると、共通点がありました。選んでいる最中に、相手の顔ではなく「これを選ぶ自分」を意識していたのです。センスがないと感じるとき、実際に欠けているのは審美眼ではなく、判断の軸です。
実際に何を外してきたのか?
具体的に書きます。同僚の送別で、花瓶に活けた状態のアレンジメントを贈ったことがあります。見た目は華やかでしたが、相手はその日のうちに引っ越しの荷物をまとめる予定で、割れ物を1つ増やしただけになりました。もらった側の負担を計算していなかったのが原因です。
別の日、知人の奥さんの誕生日に、好みを一切聞かずに直径40cmを超える花束を選んだこともあります。渡した本人は満足でしたが、後日「置き場所に困った」と本人から聞きました。金額は8,000円台で、決して安い買い物ではありませんでした。この2つに共通しているのは、「贈る側の満足」を優先し、「受け取る側の状況」を計算していなかったことです。センスの問題ではなく、順番の問題でした。
「センスがある人」は本当は何をしているのか?
花屋の店員に何度も同じ質問をしてきました。「センスのいい注文をする客は、何が違うのか」と。答えはほぼ毎回同じでした。好みではなく状況を先に話す、というものです。「派手なのが好き」ではなく「今日これから電車で持ち帰るので小さめで」「相手は一人暮らしで花瓶を持っていないかもしれない」。センスのいい選び方に見えているものの正体は、たいてい制約条件の整理です。
つまり「センスがある人」は好みを言い当てているのではなく、外れる条件を先に除外しているだけです。これは訓練すれば誰でも再現できます。
選択肢が多いギフトほど外れやすいのはなぜか?
雑貨、アクセサリー、家電系のギフトで何度も失敗してきました。理由は単純で、選択肢が多すぎて、どこで判断すればいいか分からなくなるからです。デザイン、色、サイズ、ブランド、価格帯。軸が5つも6つもあると、結局「自分が好きなデザイン」に逃げてしまいます。これが冒頭で書いた「自分基準」に戻ってしまう構造です。
逆に、選択肢が最初から絞られているギフトほど、外しにくくなります。判断すべき軸が「予算」と「大きさ」の2つくらいしかないからです。ここが、次に書く「花」という選択肢の話につながります。
センスがなくても外さない基準はあるのか?
100回以上の失敗と成功を並べて分かった基準は、次の3つです。
- 持ち帰り方を先に考える(電車か、車か、当日中に渡すのか)
- 相手の生活動線に置き場所があるか(一人暮らしか、実家住まいか)
- 好みではなく「その日の状況」を聞く(何が好きかより、今何に困っているか)
この3つはデザインの好みを一切必要としません。センスを鍛える方向ではなく、判断項目を減らす方向で解決するのが、遠回りに見えて一番早い方法でした。
3つ目の「状況を聞く」が難しいと感じるなら、具体的な質問文を相手の好みが分からないときの聞き方に用意しました。相手に贈り物だと気づかれずに聞ける形にしてあります。
なぜ花なら「センスがない人」でも成立するのか?
花が向いている理由は、この3つの基準とちょうど噛み合うからです。持ち帰りのサイズは花屋の店員に「電車で持ち帰ります」と伝えれば調整してもらえます(花屋での伝え方は3つで足ります)。置き場所の悩みも、花瓶がいらない小ぶりな花束にすれば消えます。そして好みが分からなくても、季節の花を中心に組んでもらえば、外れにくい仕上がりになります。
金額の軸もシンプルです。3,000円台なら小さめで持ち歩きやすく、5,000円を超えると見栄えが一段上がります(内訳は花束の原価を調べた記事で公開しています)。デザインのセンスを問われないまま、予算とサイズという2つの軸だけで完結できるのが、花という贈り物の構造上の強さです。
実際、恥ずかしさが理由で贈るのをためらっていた人も、選ぶ軸を絞った瞬間に迷いがなくなったケースを何度も見てきました。センスがないと悩んでいる人ほど、選択肢を絞れる贈り物を選ぶほうが、結果的に外しません。
よくある質問
プレゼント選びのセンスは後から身につきますか?
身につきます。ただし鍛えるべきは審美眼ではなく、状況を聞き出す質問力です。「好きな色は?」ではなく「持ち帰り方」「置き場所」を先に確認する癖がつけば、外す確率は大きく下がります。
花を贈るとき、センスがなくても失敗しない選び方はありますか?
あります。花屋に「予算」と「持ち帰る方法」の2つだけ伝えて、デザインはお任せにすることです。デザインの判断を専門家に渡すことで、自分の好みが介入する余地をなくせます。
相手の好みが分からないとき、花以外にも通用する考え方はありますか?
あります。「何が好きか」を聞くのではなく「今どんな状況か」を聞くことです。好みは答えにくくても、状況は誰でも答えられます。この質問の切り替えだけで、贈り物全般の失敗率は下がります。
この記事は花屋でもフローリストでもない、贈り物ど素人の立場で書いています。花屋を100軒以上まわり、実際に花を100回以上買ってきましたが、専門家ではありません。書いているのはあくまで「外し続けてきた買う側」の実感です。花の専門的な知識が必要な場合は、店頭の花屋に直接相談することをおすすめします。
