花束の原価はいくら?5,000円の花束の中身を調べて全部書きます

和紙の上に並べられたドライフラワーと、無地のカードと鉛筆

5,000円の花束の花材原価は、おおよそ1,500〜2,000円前後。原価率でいうと30%前後です。ただしこれは「残り7割が儲け」という意味ではありません。生花は仕入れた2〜3割が売れ残って捨てられるからです。

この記事では、公開されている数字と、僕が100回以上花を買ってきて分かったことを分けて書きます。

花屋の原価率はどのくらいか?

公開されている情報を整理すると、花屋の一般的な水準はこうなります。

項目目安
原価率30%前後
利益率40%前後
売価の付け方仕入値の約2倍
切り花のロス率仕入れの2〜3割
中央卸売市場の手数料9.5%

花の種類によって差は大きく、ガーベラのように原価の6〜8倍で売られるものもあります。単価が安く、1本あたりの手間が相対的に重いためです。

なぜ原価率が低く見えるのか?

「原価3割」と聞くと高く感じます。でも生花には、他の小売と決定的に違う条件が3つあります。

① 在庫が持てない

売れ残った服は来週も売れます。売れ残った花は捨てるしかありません。仕入れの2〜3割が廃棄になる前提で値付けするので、売れた分に廃棄分のコストが乗ります。

しかも値引きが効きません。花は贈り物として買われるので、鮮度が落ちたものは安くても選ばれないからです。買ったあと何日持つかは花束は何日持つ?に書いています。

② 手間が価格に入っている

市場から届いた花はそのままでは売れません。水揚げをして、余分な葉を落として、鮮度を保つ。花束にするなら、組んで、束ねて、包む。この作業時間は原価に含まれませんが、実際にはコストです。

実感として、店頭で「5,000円くらいで」と頼んでから包み終わるまでの待ち時間は15〜25分でした。その前段に、毎朝の仕入れと1本ずつ茎を切り直す水揚げがある。値札に乗っているのは、その日の作業時間の一部です。

③ 相場が動く

母の日、お盆、彼岸、年末。需要が集中する時期は市場価格が上がります。同じ花が平常時の2倍近くになることもあります。繁忙期に花が高いのは、店が便乗しているわけではありません。

逆に、旬の花はむしろ安く、質もいい。差が出たのは、真冬に春の花を指定したときと、6月にアジサイを選んだときです。前者は同じ予算で入る本数が目に見えて減り、後者は「これで5,000円?」と思うボリュームになりました。花の種類を指定しないほうが、同じ金額で量も質も上がります。

5,000円の花束、内訳の推定

上記の水準から逆算した推定値です。実測ではありません。

内訳金額(推定)中身
花材の仕入1,500〜2,000円花+小花+葉もの
廃棄ロスの負担分400〜600円売れずに捨てた分
包装資材200〜400円ペーパー・リボン・保水材
作業時間(技術料)800〜1,200円水揚げ・組み・ラッピング
店舗コスト残り家賃・冷蔵ケース・人件費

つまり「花そのもの」に払っているのは3〜4割で、残りは花束の状態にして手渡せるようにするための費用です。

この5,000円で入るのは、季節の花10本程度+小花や葉もの数種類。女性が両手で持てるくらいのサイズです。

ここで一つ注意があります。両手で持つサイズは店頭では見栄えがしますが、電車で持ち帰るとなると話が変わります。渡すのが気恥ずかしいと感じる場合、原因は金額ではなくサイズであることがほとんどです。予算を上げる前に、持ち帰る経路を先に決めたほうがいい。

原価が3割なら、残りは全部儲けなのか?

原価を調べた人が最後に行き着く疑問だと思います。結論は、違います。

1つめ、ロスが原価率の外側にあること。原価3割は「売れた1本」の話です。仕入れた10本のうち2〜3本は捨てられるので、売れた7〜8本で廃棄分を回収しなければ店は続きません。織り込むと実質の原価率は4割前後になります。

2つめ、残りに技術料が含まれていること。同じ花材を同じ本数渡されても、素人が組んだ束と花屋が組んだ束は別物です。どの花を高く出しどれを沈めるか、正面をどちらに作るか。ここは手間と判断に払っている部分です。

だから「原価率が低い=ぼったくり」にはなりません。むしろロスの重さを考えると、原価率30%は生花小売が続けられるぎりぎりの水準だと見たほうが実態に近いです。

3,000円・5,000円・10,000円で何が変わるのか?

本数だけではありません。使える花材の種類が変わります。価格帯ごとの違いを整理するとこうなります。

3,000円5,000円10,000円
花の本数7本前後10本前後15〜20本
サイズ片手で持てる両手で持つ両手で抱える
メインの花スプレーバラ・ガーベラダリア・アジサイも選べるユリ・大輪バラも入る
向く場面個人から個人へお世話になった相手へ連名・式典

つまり「3,000円だと寂しい」のではなく、3,000円では選べない花があるということです。逆に言えば、その花が要らないなら3,000円で十分成立します。2,000円〜2万円の高さと本数をcmで並べた比較は花束は予算でどのくらい変わる?にまとめました。

予算を1,000円上げたときの体感差は、3,000円を4,000円にするときが最も大きい。ここを超えると使える花材の選択肢が一段広がるからです。逆に8,000円を9,000円にしても、受け取る側にはほとんど分かりません。増えるのは本数であって、印象ではない。金額を上げるなら、まず3,000円台を抜けることを優先したほうが効きます。

1万円を超えると、増えた予算は「印象」ではなく「大きさ」に変わります。連名で2万円をそのまま花束1本に使うと、本人が持ち帰れなくなる。人数から集金額を決める手順は送別会の花束、予算はいくら?に、個人と連名で桁が変わる理由は退職の花束の相場にまとめました。

ネット通販と街の花屋、原価の構造はどう違うのか?

同じ5,000円でも、通販と店頭ではお金の行き先が違います。

街の花屋ネット通販
店舗の家賃かかるかからない(倉庫費は発生)
送料・クール便不要1,000円前後が別途
廃棄ロス店頭在庫の分だけ発生受注後に仕立てるため小さい

通販はロスが小さいぶん花材にお金を回せる一方、送料とクール便代が確実に乗ります。「5,000円の花束」でも総額は6,000円台になりがちです。店頭はその逆で、家賃と廃棄を抱えるかわりに配送費がゼロです。

比べるなら金額ではなく、その場で相談したいか、遠方に直接届けたいかで選ぶほうが実際的です。プレゼント選びに自信がないという自覚があるほど、店頭で相談できる価値は送料より大きくなります。

結局、いくら出せば納得できるのか?

原価を全部見たうえでの結論です。迷ったら5,000円、持ち帰りが電車なら3,000〜4,000円。この2つで足ります。

  • 3,000〜4,000円:片手サイズ。電車で持ち帰る場面。安すぎないかを気にする必要はありません
  • 5,000円:花材の選択肢が一段広がる境目。相手を選ばず外しにくい
  • 10,000円以上:連名や式典など、大きさそのものに意味がある場面に限る

金額で解決しないことも、内訳を見れば分かります。増える予算は花材のグレードとボリュームに向かうだけなので、「誰に・どんな場面で渡すか」がずれていれば高くしても外れます。

場面によって基準が変わる贈り方もあります。結婚祝いは金額より会場への持ち込みルールが先に効くので、結婚祝いに花を贈るときのマナーを先に確認したほうが失敗しません。

100回買ってきて分かったこと

ここからは数字ではなく、僕自身が100軒以上の花屋で買ってきた実感です。

同じ5,000円でも、店によって出てくるものは全然違います。ただ、その差は「高い店・安い店」の差ではありませんでした。

一番差が出たのは、こちらが用途をどれだけ伝えたかです。同じ予算でも、誰に贈るか・どんな場面かを伝えた時と、金額だけ言った時とでは、出てくるものがまるで違う。金額だけ伝えると、金額なりの無難な束になります。

もう一つ、「予算内で一番いい状態の花を中心に」と言えるかで中身が変わります。花の名前を指定すると、高い時期でも店はそれを入れてくれる。指定しなければ、その日いい状態のものが優先されます。

原価を知ったうえで言うと、値段より伝え方のほうが、受け取る花束の質を左右します。具体的な伝え方は花屋での注文の伝え方にまとめました。

よくある質問

花屋は儲かるのですか?

原価率だけ見ると良く見えますが、廃棄ロスが2〜3割あり、作業時間も長い業態です。国内生産量の20〜30%が廃棄されているという指摘もあります。数字ほど楽な商売ではありません。

ネット通販のほうが安いですか?

単純比較はできません。通販は配送料とクール便代が乗る一方、店舗を持たない分の経費は下がります。同じ金額でも、店頭は「その場で相談できる」、通販は「遠方に直接届く」という価値の違いで選ぶほうが実際的です。比べるなら送料込みの総額で見てください。

安い花屋は質が悪いのですか?

そうとは限りませんが、原価率を大きく下げるのは難しい業態です。極端に安い場合、花材の種類か鮮度、あるいは仕立ての手間のどこかに差が出ている可能性はあります。


数字は公開情報をもとにした推定です。実際の仕入伝票を見て書いたものではありません。この記事は、100軒以上の花屋を回り、100回以上花を買ってきた買い手の立場から書いています。僕は花屋でもフローリストでもありません。